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厳選の三津田恐怖譚降臨!

2015年09月13日 category : スタッフおすすめ本 

ついてくるもの

三津田 信三(著/文 他)

高校二年生の私が、学校の帰り道にちらっと目にした、えも言われぬほど鮮やかな朱色。それは廃屋の裏庭に飾られたお雛様だった。どれも同じ箇所が傷付けられていた人形たちの中で、一体だけ無傷だったお姫様を助けなければと思った私は……(「ついてくるもの」)。正視に堪えない恐怖の、最新ホラー短篇集。表題作ほか6編を収録!

 

私が初めて読んだ三津田 信三氏の作品は、『凶鳥の如き忌むもの』だった。
流浪の幻想小説家を語り手とした刀城言耶シリーズだ。

18年前、鳥坏島の鵺敷神社に伝わる秘儀〈鳥人の儀〉に起きた巫女消失、そして関係者の失踪。その〈鳥人の儀〉が再び行われることになった。
18年前と同じく巫女は消え、関わる人が次々と行方不明になっていく。

超常現象なのか、それとも事件なのか、刀城言耶シリーズは最後のページを読むまでその作品が推理小説なのか怪異譚なのかわからない。でも基本は推理小説だ。
その推理は断定的なものではなく、自問自答を繰り返しながら真実に迫っていく。推理の結論が何回も入れ替っていくので戸惑いつつも試行錯誤を楽しませてくれる。

この作品は実際に事件が起きるまでは、民俗学的な考察が多いのだが、物語の終盤では、刀城言耶が、論理的に密室からの人間消失の可能性を系統的に検討していく、しかしその真相はそのどれにも当てはまらないものだった。
他の作品を読んでから気づいたのであるが、シリーズの他の作品と比べると推理小説としての側面が非常に強い作品だと思う。

この作品ですっかり魅せられた私は、
語りの中に犯人の視点が描かれ、意外な場所に隠れていた『厭魅の如き憑くもの』。
童謡の見立て殺人と一家消失の謎を描いた『山魔の如き嗤うもの』。
斬新な首の無い死体の恐るべき理由『首無の如き祟るもの』。
短編集『密室の如き籠るもの』と刀城言耶シリーズを手にしたが、まだ読み尽くしてはいない。

いずれの作品も、密室からの人間消失や、閉鎖空間での連続殺人(いわゆるクローズド・サークル)に代表される本格ミステリ風な形をとりつつも、土俗的・民俗学的な怪異譚の融合を図られている。怪談の様なミステリーといえるような不思議な作風だ。

三津田 信三氏の作品には他に、作者と同名の作家を登場人物とした作家三部作、死相学探偵、家三部作、短編が数多くあるが、こちらは全くの未読だ。
三津田 信三氏の最新ホラー短篇集、手に取ってみたい一冊。

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